導入文
「将来が不安」「貯金が足りない気がする」——多くの人が感じる“お金の不安”は、実は数字の問題ではありません。
実際の残高よりも、「自分がどのくらい使って、どのくらい必要なのかが曖昧な状態」にこそ、不安の根源があります。
お金の悩みを解消するカギは、増やすことよりも“把握すること”。
今回は、心理学的にも裏付けられた「お金の曖昧さ」と不安の関係、そしてその解消法について考えます。
なぜ人は“お金”に不安を感じるのか
曖昧な状況は脳にストレスを与える
米国のプリンストン大学の研究によると、人間の脳は「不確実性(曖昧さ)」に非常に敏感で、たとえネガティブな結果が分かっていても、“分からない状態”よりはストレスが少ないとされています。
つまり「将来どうなるか分からない」「貯金が足りているか分からない」という“曖昧な状態”こそが、脳にとって最も負担になるのです。
数字ではなく「見通しの欠如」が不安の正体
金融庁の2024年の家計調査でも、約68%の人が「老後資金が不安」と回答しています。
しかし、そのうち「具体的にいくら必要かを計算している人」は3割以下。
不安の多くは「足りないこと」ではなく、「分かっていないこと」から生まれています。
「曖昧さの不安」を減らす3つのステップ
① “今”を見える化する
家計簿アプリやエクセルで構いません。
目的は「節約」ではなく、“現実を数値化して曖昧さをなくす”ことです。
特に固定費(家賃・通信費・保険)は一度整理するだけで大きく可視化され、安心感が増します。
💡ポイント:「把握=コントロール感」
心理学では、コントロール感を得ることで不安が軽減されるとされています。
② 将来を“ざっくり”でも見通す
老後資金やFIREを考える時、「正確な数字」を求めすぎると逆に動けなくなります。
年齢・生活費・運用利回りなどをざっくり想定し、“方向性”を持つことが大切。
不安の多くは「ゴールの不明確さ」から来るため、目安でも安心感につながります。
📊 例:
- 生活費:月18万円
- 想定利回り:年4%
- 必要資産:約5400万円(生活費×12ヶ月×25年 ÷4%)
これだけでも「見えない不安」から「見える課題」に変わります。
③ “曖昧な情報”を遮断する
SNSやニュースで流れる「貯金〇〇万円ないと老後破綻」などの情報は、あなた自身の状況とは関係ありません。
不特定多数の数字にさらされるほど、比較による焦りが生まれます。
自分に必要なデータだけを残し、**“情報のダイエット”**を心がけましょう。
不安を減らすのは“お金の量”ではない
興味深いことに、米ギャロップ社の調査では「幸福度と所得の関係」は年収約8万ドル(約1200万円)を超えると頭打ちになるという結果が出ています。
つまり、“お金の量”が不安を完全に消してくれるわけではありません。
むしろ、自分の生活と数字を理解している人ほど、少ない収入でも安心して暮らせる傾向にあります。
まとめ
お金の不安は、通帳の数字ではなく、心の中の曖昧さから生まれます。
「把握する」「見通す」「遮断する」——この3つのステップを実践するだけで、同じ収入でも安心感は劇的に変わります。
静かな暮らしとは、豪華な生活ではなく、曖昧さのない心の状態。
数字を“増やす”より、“理解する”。
それが、本当の意味での“豊かさ”の第一歩です。



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